2001年 1月号 特集

アリゾナの政治

2000年アメリカ大統領選挙も混乱の後、ようやく収まり、ジョージ・ブッシュが大統領になることに決まった。これを機に米国内で憲法、選挙制度、最高裁の在り方など論議が沸騰した。
結果はともあれ、少なくとも政治を身近に考える良い機会だ。
そこで、今月はアリゾナの政治や州政府の機構を扱ってみよう。
上写真:アリゾナ州議会庁舎




ジョーン・マッケイン ジョン・カイル
アリゾナ選出の上院議員
各州から2名の上院議員が選出されている。
アリゾナ州からは、ジョーン・マッケインとジョン・カイル
両者とも共和党員。
ジョーン・マッケインは、今年の大統領選挙に先立ち、共和党の大統領候補(当時)ジョージ・ブッシュから、副大統領の候補者に上がったが、指名されるまで至らなかった。


アリゾナ選出の下院議員
 アリゾナ州には、6つの選挙区(ディストリクト)があり、それぞれの選挙区から1名の下院議員が選出されている。選挙区は、フェニックス・メトロポリタンを除いた全州を人口分布で6つに区切り、フェニックス・メトロポリタンも、同様に人口に基づいて6つに区切って作ったもの。
 6名は、下記の通り。

ディストリクト1 マット・サルモン
ディストリクト2 エド・パスター
ディストリクト3 ボブ・スタンプ
ディストリクト4 ジョーン・シャデグ
ディストリクト5 ジム・コルブ
ディストリクト6 J.D. ヘイワース

アリゾナの州政府
州の憲法
各州に憲法が制定されている。憲法は、4つの事柄を提供する。
1.政府の組織構成(立法、司法、行政)
2.州知事や議会など、州の各部署の権力を設定
3.州政府の権力の制限を設定
4.憲法改正の方法を設定


アリゾナの立法府
アリゾナ州の立法府は連邦政府と同様に、上院と下院に分かれている。アメリカ全州でネブラスカ州のみ上下院を設定していない。上下院に分けることで、立法のプロセスが2回行われ、法律制定のチェックと権力のバランスをとっている。
選挙区 議員の資格
上院、下院それぞれ30の選挙区から選出され、各選挙区から上院議員は1名、下院議員は2名出ることになっている。選挙区は、人口によって区切られ、10年に一度、人口の増減にしたがって変更される。 1.アメリカ市民
2.25才以上
3.州に3年以上居住
4.米国に1年以上居住
アリゾナ州の立法府 選挙で勝つには
任期 2年 2年
議席 30 60
選出資格 アメリカ市民
25才以上
アリゾナ州に最低3年居住
米国に最低1年居住
1.自分の居住している選挙区から立候補する。
2.共和党または民主党から公認されること。他の党から立候補した場合は、当選する可能性がない。
3.立候補者は、自分で選挙費用を捻出する能力があること。選挙運動の費用は安くない。

アリゾナの行政府
州知事  州知事は、連邦政府の大統領に該り、州の行政の指導者。州知事の資格は、
1.25才以上、
2.10年以上アメリカ市民であること、
3.5年以上州に居住していること。
州知事の任期
/継承
 
州知事の任期は4年。1970年にそれまでの2年から変更された。任期は何回でも選出されることができる。任期満了以前に次の理由で公務を去ることも存りうる。
1.辞職、
2.身体的損傷、
3.弾劾、
4.死亡。
この場合は、知事職の継承が行われる。継承の順は、総務長官、司法長官、財務長官、教育長。
州知事の権限
1.執行権 法の執行をする。州政府の公務員を管理する。管理職員の任命/罷免を行うがこの権限は限られている。任命に他の高官の承認を必要とする場合も多い。また、州知事は、連邦政府と州政府との連携を行う。
2.軍事権 州知事は州の国家警備隊の最高司令官。州内の暴動や災害などが起きた時に出動を命令する。
3.立法権 州知事は、州議会で可決された法案を承認するか、あるいは拒否権を行使することができる。
4.司法権 有罪決定者に対して赦免、処刑延期、減刑を執行できる。
法律ができる過程
 
法案が提出されてから承認されるまで9つの段階を経る。
リファレンダム  議会が協議しまたは議会を通過した特定の重要法案について、その賛否を直接選挙民に問う一般投票制度。11月の大統領選挙と同時にアリゾナで行われた投票もこのリファレンダム。この直接投票で生まれる法律も多い。
アリゾナの歴代州知事
*P.12の「ひとくち知識」を参照
ジョージ W.P. ハント 民主党 1912-1917
トーマス E. キャンベル 共和党 *1917-
ジョージ W.P. ハント 民主党 *1917-1919
トーマス E. キャンベル 共和党 1919-1923
ジョージ W.P. ハント 民主党 1923-1929
ジョーン C. フィリップス 共和党 1929-1931
ジョージ W.P. ハント 民主党 1931-1933
ベンジャミン B. モアー 民主党 1933-1937
ローリー C. スタンフォード 民主党 1937-1939
ロバート T. ジョーンズ 民主党 1939-1941
シドニー P. オズボーン 民主党 1941-1948
ダン E. ガービー 民主党 1948-1951
ハワード パイル 共和党 1951-1955
アーネスト W. マクファーランド 民主党 1955-1959
ポール ファニン 共和党 1959-1965
サムエル P. ガダード 民主党 1965-1967
ジョーン R. ウィリアムズ 共和党 1967-1975
ロール カストロ 民主党 1975-1977
ウェスリー ボリン 民主党 1977-1978
ブルース バベット 民主党 1978-1986
イバン ミカム 共和党 1986-1987
ローズ マフォード 民主党 1987-1990
ファイフ サイミントン 民主党 1990-1997
ジェーン ハル 共和党 1997-現在
司法長官
(Attorney General)
 
司法長官は、州の司法省を司る役。任期は4年。資格は、10年以上アメリカ市民で、5年以上州に居住し、5年間弁護士の経験がなければならない。
 司法長官の仕事は、州法を犯した者を公訴、州が提訴された場合に州を弁護、州の諸機関への法的アドバイスを行うことだ。
総務長官
(Secretary of State)
 
総務長官は、州の財務以外の記録をつける役。また州の公式文書に使われる州印も総務長官の管轄下にある。
 総務長官となる資格は、州知事のそれと同様。全ての州法は、総務長官が印刷し、他の公式文書(選挙の公式パンフレットなど)も総務長官が印刷。全ての請願書は、総務長官に提出され、選挙民の署名の数もここで確認される。また、総務長官は、選挙の運営の最高責任者となる。
財務長官 (Treasurer)  財務長官は、州の最高財務役員。財務長官になる資格は、州知事のそれと同様。4年の任期。州法で、任期を2回まで繰り返すことができる。と定められている。財務局長は、州知事または州議会の許可なく、辞任することはできない。
 財務長官の仕事は、州の出納を管理すること。
教育長
(Superintendent of
Public Instruction)
教育長は、州教育省の最高責任者。4年の任期。教育長になる資格は、州知事のそれと同様。
 教育省は、教師の認可をおろし、学校区に予算を分配し、学習要領を発行する。

アリゾナの司法
アリゾナ州最高裁判所
(Ariozna Supreme Court)
アリゾナの最高裁判所は、5人の司法官で構成される。その中から一人が最高司法官に選出される。
司法官の数 司法官4人、最高司法官1人
資格 モラルを持つ人格
10年の弁護士の経験
任期 6年に一度の一般選挙で民意を問う
アリゾナ州控訴裁判所
(Arizona Court of Appeals)
下級裁判所からの控訴を扱う。
上級司法裁判所 (Superior Court) 州の一般的管轄権を持つ裁判所。$2,500以上の民事裁判、納税、離婚などに関する訴訟を扱う。

エピソード その1 エピソード その2 エピソード その3
裁判官の長服 アリゾナ最後の絞首刑 マイヤー裁判官の話
 裁判官は、あの黒い長服で象徴されるが、初期のアリゾナには、この伝統的な長服が適用されなかった。アリゾナ州民にとって長服は非民主的で尊大なイメージが強かったのだ。
 ところが、1952年からその伝統が戻る。理由は、裁判官が個人的な感情や偏見を法廷に持ち込まないために、長服を着用して正当な裁判をせよ、ということだった。
 アリゾナが州になる以前、絞首刑は頻繁に行われていた。正にワイルド・ウエストの本場だ。州になってからも、この刑は残り、1930年まで執行されていた。
 歴史上最後の絞首刑囚は、イバ・ドューガン。殺人罪。1930年2月21日に絞首刑。この執行後、州議会は絞首刑を廃止するように決めた。
 その名は、チャールズ・マイヤー。1903年まで40年間ツーソンの治安判事として活躍。ある日、彼がツーソンのダウンタウンを馬車で走っていた。つい気分が良くスピードを出しすぎたようだった。コングレス・ストリートで、彼は突然自分の非を感じる。そこで、馬を止め、自分自身にスピード違反の罪状を述べ、社会に模範を示すべく、15ドルの罰金を科したのだ。
 公正と常識を尊重する裁判官の話。さて、100年後の私達は?






もうひとつの混乱選挙
 2000年の大統領選挙は接戦中の接戦で、多くの論議を醸し出したが、アリゾナの州知事選挙の歴史も似たようなことを経験している。
 時は、1916年。アリゾナが正式に州となってから四年後。初代州知事ジョージ・ハントが民主党から三期目の再選を狙って出馬(当時は一期が二年)。これに対し、共和党からはトーマス・キャンベルが。
 接戦の末、開票が行われるとトーマス・キャンベルがたった 票余で勝利。ところが、誰かの様に、ハントは自分の敗北を認めない。
ジョージ・ハント
 1917年1月。なんと、キャンベルとハントは、州知事就任式を別々に行って、知事職に就いてしまう。ハントは、知事室に居座っており、キャンベルは、自宅を知事室として職務を遂行しようとする。
 アリゾナ州という体に頭が二つできてしまったようなものだ。混乱は当然。
 州の財務長官は、キャンベルの署名したチェックは州として無効だと言い出す始末。もちろん、この財務長官は民主党出身。ハントは、票の再集計を要求。再集計の結果はまたも 票不足。そこでハントは裁判所に。しかし上級裁判所の判決は、ハントの負け。それでもハントは諦めないで、州最高裁判所へ上告。最高裁判所は、多くのアリゾナ選挙民が投票用紙に民主党を支持。その上で、キャンベルに投票していることを確認。民主党は、これでハントの勝利を訴える。
 結局、キャンベルが数ヶ月、無給のまま知事職を勤め、ハントがその後正式な知事として任期を全うすることになる。
 その後キャンベルは、1919年から1923年の間を正式に州知事として職務を遂行した。
 一方ハントも合計7期州知事を勤めた。
 ハントは大変個性の強い政治家として、味方の敵も多く、進歩主義を掲げて、民主党内の保守派と常に衝突があった。




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